ケニアレポート(2007)

The Inada-Lange Foundation for AIDS Research

初参加のプムワ二キャンプ
〜保健師の視点から〜 / 久保清香(釧路市健康推進課/保健師)

9月13日(木)初日 晴れ
宮城島先生の車に同乗させてもらい釧路空港へ。そして4人合流。釧路空港で早速荷物のトランジットに怪しい雲行き。何とかクリアする。荷物達よ、ケニアで無事再会しよう!
13:40 釧路空港→中部国際空港(セントレア)15:20着
空港の温泉に入り、名古屋組との合流まで、最後の日本食を堪能する。
20:10 イルファー名古屋と合流。ベテランと新人のチーム、今年もついに出発する。
22:45 中部国際空港(セントレア)→ドバイ空港
約10時間のフライト後、ドバイ空港に到着。時差5時間。アラブの富豪達に目を奪われながら、空港で飲んだり食べたり買い物をする。しかし、最後は待ち時間の長さにみんな疲れて、発語少ない。
14:20(現地時間) ドバイ空港→ナイロビ空港 (現地16:20、時差6時間)
釧路組は約1日半の旅路となった。ナイロビ空港で、荷物と無事再開。内海先生(名古屋/内科医)荷物ひっかかり、お金払う羽目に…。交通渋滞のため、約1時間(本来20〜30分)かかりホテルへ。後発隊の古参組は2時間の交通渋滞の後到着する。
驚くしかない交通事情。ものの10cmくらいのスレスレ状態で平行運転し、出たもの勝ちのカーレース。そして排気ガスと砂埃で空気がグレー色である。ひゃー(>_<)ホテルで日立製作所の技術プロジェクトチームと合流し、初日ホテル晩餐。顔合わせとミーティングをし、明日以降の活動への思いを高める。
あっという間の一日だったが、いよいよ明日より始動。明日・あさってはHIV陽性者のフォローアップ診療日。ひそかに気持ちを高ぶらせた。

9月14日(金)、9月15日(土)キャンプ初日/フォローアップ診療 曇り/晴れ
(ここより現地時間、日本との時差6時間)
08:00 ブールバードホテルで朝食
ついに今日から始動。普段朝食を食べない私もしっかりエネルギーをとろうとモリモリ食べる。同時に気持ちも高ぶっていく。
09:00 プムワニ村へ
市街からスラム街へ…。どんどん生活レベルが下がっていく景色。 これが現実か。ソーシャルスペース(キャンプ予定地)が地元民の会合(選挙に向けてらしい、とてもにぎやか)のため使用できず。すったもんだの約1時間後、会場が変更となり、みんなで荷物を持って大移動。会場設営をし、昼食抜きで午後からの診療開始。
12:00 HIV陽性者フォローアップ診療の開始
「HIV陽性かどうかは見た目ではわからない」ことを改めて実感する。 初日、私は診療そのものより、プムワニ村(スラム街)の生活事情に触れる一日となった。生活環境の劣悪さ。生活レベルが日本と違いすぎる。本来業務とする「健康づくり」「生活習慣の改善」なんて、程遠い感じがした。この劣悪な環境の中、一体何ができるのだろう。私にできることは何なのだろう。この時点ではわからなかった。それでも、出発前に大変だとレクチャーされていた公衆トイレ等もこの数年で整備されたようで、敷地内には草花がいていたり、そのトイレを使用することに抵抗は全くなかった。そして、時間とともに宗教のお祈りが始まる。ラマダン(断食)する教徒たち。ケニアの生活時間が流れる。
会場の外に出ると、住民の生活がそこにある。道端で戯れている子ども達。本日時間的に余裕あったため、外で子ども達と日本の歌遊び・手遊びをして遊んだ。子ども達が大集合し、とても楽しげに参加してくれる。子ども達の屈託のない笑顔。なんて純粋。「売っているものだけがおもちゃではない。体そのものがおもちゃになる」。日頃子育て支援をする中で口にするその言葉に間違いはない。
その一方で母親に抱かれた1歳前後の女の子。こすけた衣服からのぞく頚部。いくつかの潰瘍がみられ、子どもらしい笑顔はなく無表情である。こんな状態にまで放置しておくなんて日本では考えられない。医療との距離が遠いことを痛感する。
河野先生(歯科医)にデンタルケア状況の偵察をまかされていた。今日出会った人は何やら枝をかんだり、磨くしぐさをしている。古来の方法がここでは日常である。何十年前の日本なのだろう。
洗濯を生業とする主婦達。道路で物を売ったり物乞いをする人達。一方の市街では立派な服を着て清潔感にあふれたビジネスマン・OLさん。たかが車で10〜20分の距離で生活レベルがこんなにも違うものか。貧富の差の大きさに驚く。
そして頼もしい釧路メンバー。宮城島先生の巧みな英語コミュニケーション、診療、サポート・・・。医者である宮城島先生を初めてじっくり見た。改めて本当にすごい人と日頃から活動できていることをありがたく思う。須藤先生の壁のない人との関係性の上手さはここでも光り、次々に鍼治療を進めていく。そして、清水先生。やっぱり作務衣だ!でも、足元は草履でも雪駄でもなくスニーカー。ついにスニーカー姿の清水先生登場!
アパートに帰ると鼻の穴の中は真っ黒くろすけ。それでも、古参組の話だと、夜から降った雨のおかげで例年よりとてもいい環境みたい(いつもは乾燥の中で砂埃まみれらしい)。それにしても夜は肌寒い。釧路にいるみたい。

9月16日(日)フォローアップ診療2/初参加組は観光(キャンプ2日目) 晴れ(時々雨)
08:00 朝食
今日から自炊生活スタート。森下シェフ(名古屋/検査技師)による朝食サービス。コンソメスープ、ウィンナー、ブロッコリー、カリフラワー、スクランブルエッグ、トースト・・・。超おいしい!贅沢!みんなでわいわいしながらの朝食。スタッフのコミュニケーションも大切であり、そして心地よい。
09:00
古参組:フォローアップ診療2日目へ ※内海先生、眩暈のため今日は診療お休み
初参加組:ナクル湖サファリ観光。ピンク色のじゅうたんのようにひしめき合うピンクフラミンゴの群れ、ゼブラ、水牛、スマートなガゼル、鳥…。「ケニアに来たー♪」と実感した。
20:00 ホテルに到着。
みんなで宴会。須藤先生が芋わかめの味噌汁やサラダを振舞う。宮城島先生も皮むきに参加したと自慢していた。
明日からついにクリニックスタート。朝7:00朝食、8:15出発予定。ついに本番。心躍る。不思議に緊張感はない。きっとワクワクしているのだろう。みんなの邪魔をしないよう、できることを着実にこなしていきたい。そして現状をしっかりこの目で見てこよう。まずはそんな思いだった。

9月17日(月)クリニック初日(キャンプ3日目) 晴れ/曇り
08:00 プムワニへ出発
今日からはオペ衣を来て参加。気持ちが引き締まる。現地に到着するとすでにたくさんの患者が玄関前にひしめき合っている。過去の実績の積み重ねが形となっているのだろう。それとともに日常いかに医療との関係が疎遠であるのかも伺える。会場設営始める。ベニア板とシーツでブースを仕切る。岡本さん、植木さん(名古屋/看護師)とともに3人娘は薬局業務にのぞむ。
11:40 クリニック開始
統括:稲田先生
内科医:(内海:休養中)、宮城島、山本、佐藤、マダーニ
小児科医:エマ
レジスタントナース:デニーズ他
歯科医:レイモンド
ラボ:森下、山川、日立組
鍼灸:須藤、清水
薬局:岡本、植木、久保
子どもからお年寄りまでたくさんの患者が来所。会場は一気に患者でにぎやかになる。各ブースでボランティアとの連携も光る。そして一気に処方箋が薬局に押し寄せ大混雑。業務を終えたドクターたちが次々と応援に来てくれる。慣れない処方箋と格闘し、走り回り、そして英語でのコミュニケーションに格闘する。日常医療現場にいない私には、薬剤名もその英語スペルも効用も何だかよくわからず、ただ必死に業務を遂行する。そのうち、次第に慣れてくるもんだ。
15:30 ランチ逃す
ノンストップで気づいたらこの時間。ランチはすでに終了していた。最後はドクターも応援に来てくれて何とか無事終了。ひたすら任務を全うするしかできなかったが、爽快感を感じていた。
17:30 片付け終えて無事終了
20:00 BOULEVARD HOTELで夕食
今日は宮城島先生、須藤先生に挟まれた席。いつもの釧路にいる感覚に戻ったのか張っていた気持ちが一気に和らいだ。
水曜日は大富豪マダーニのホームパーティ(夕食会)に招いてもらえるようだ。わぁい(^o^)/とにかく一日ノンストップで業務をこなし、疲れすぎたためか、目がらんらんとした夜だった。

9月18日(火)クリニック2日目(キャンプ4日目) 晴れ/曇り
09:30 診療開始
朝医師ミーティングが開かれた。昨日(初日)は、処方箋をうまく解読できず、各ドクターのところへ確認に行くだけでも時間がかかった。しかし、本日はとても順調に処方が進んだ。スタッフ間の距離が一気に近くなったように感じ、嬉しさをかみしめながら業務を全うした。薬局順調。処方業務もスラスラできるようになってきた。
鍼灸ブースに歴代参加スタッフの写真がはられていた。弟子や仲間を大切にする須藤先生のあったかい人柄に心があたたかくなった。
16:00 診療終了
19:10 夕食(中華料理)
こちらではどうやらビールやジュースを常温で飲むのが常らしく、「ICE?」と聞かれる。在庫切れにより常温ビールをいただいてみたが、やっぱりビールは冷たい方がおいしい。

9月19日(水)クリニック3日目(キャンプ5日目)
08:15 出発
昨日に引き続き、さらに業務が自分の中でなめらかになってきた。おかげで少し、気持ちに余裕ができ、ステージ上の薬局ブースから、薬待ちの患者さんに目を向けたり、時間があれば話しかけたりできた。現地通訳のポリン(24歳の女性)と話をした。私の年齢が29歳だと伝えたら、目をまるくして驚いていた。ティーンだと思ったらしい(日本人自体若く見られるが・・・)。同時にこの年で結婚も出産もしていないのか、と不思議がられた。不思議がられたことにビックリした。そうだろう。この国は一夫多妻、未婚でも子どもがいたり、1人の男性に10人前後の子どもがいたりする。そしてそこに「避妊」や「性感染予防」がなされていないから、子だくさん、性感染(HIV)の蔓延というこの状況があるのだろう、と感じた。
診察や鍼灸ブース、ラボブースにも足を運び、どんな様子なのかちょっとだけ偵察してみた。各スタッフのこの活動に対するあつい思いを感じ、何だか鳥肌が立った。と同時にまた心があたたかくなった。
夜 夕食(マダーニ家でホームパーティ)
マダーニ(インド系の内科医、女医さん。ケニア出身)のホームパーティに招待してもらう。夢のような時間。バーベキューやおいしい料理、持ち寄りの手作りデザートに舌鼓。また、AMREF(African Medical and Research Foundation)というNPOとの接触ともなった。もう活動歴は今年で50年になるらしい。同じような思いを持って活動する団体は世界中にいっぱいあるんだな、と思った。それぞれの団体の活動も横の連携を強化することで今後大きな力へと変わっていくのだろう。帰りはみんなで1台に乗り込んで帰宅。ぎゅうぎゅうで苦しい体勢だったけど、すごく楽しかった。

9月20日(木)クリニック4日目(キャンプ6日目) 晴れ(天気がよくなってきた)
07:00 朝食。その後近くのショップで物色した。
09:40 診療開始
薬局業務少し余裕出てくる。今日はシロップの薬を入れるためのビンを持参する患者(子持ちの母)が多数見られる。今までのキャンプでの経験が生んだ行動だろう。地域住民がこのキャンプを待っている姿勢と浸透ぶりが伺えた。
また、本日会場出口に「栄養指導」ブースが午後より登場。帯広JICAで研修を受けたシャンビさんが応援に来てくれる。栄養指導が入るのは今年が初らしい。なにやら袋に入った粉(小麦?)やブロッコリー、りんご、現地の果物、フードミキサー、指導本が机に置かれていて、シャンビさんのまわりに人が群がっている。日本的視点ではあまりにも少なく、バランス的にもどうなのかと考えてしまうフードモデルであり心もとない感じも受けたが、最低限を伝えるだけでもこのコミュニティには大きな力と化けるのだろうとも感じた。帯広JICAとのつながりが、ここケニアでつながる、この奇跡的な人のつながり。人のつながりの大切さを痛感する。
帰りに宮城島先生、車に頭をぶつけて「脳しんとう寸前」事件。背が高いのも大変なんだなぁ…。すごい音だった。
19:30 夕食
釧路チームで「肉じゃが、豚汁」担当。須藤先生は、部屋で2人の鍼治療施行。宮城島先生は負傷のためお休み中。清水先生と二人でがんばるが・・・。珍事件勃発も何とか形になる。

9月21日(金)クリニック5日目(キャンプ7日目) 晴れ
07:00 本日の朝食は胃のお休み日とした。
08:15 出発
何だかとてもあったかくなってきた。「南半球だぁい!」と喜びスタートする。受付時間制限したためか、薬局業務は全体的にも余裕があった。
今日は昨日から稲田先生にお願いしていた採血を5人ほど体験する。稲田先生、検査技師のサポート受けながら実施。血管突き破る感じをやや体感。黒人の腕はやっぱり黒いなぁ。日常採血をしない私のために、このキャンプに向けて採血の練習に腕を貸してくれた職場のスタッフ、愛と生命のネットワークのスタッフ、医務室の中田さんに感謝の意を込めながら、5回の採血に臨んだ。
最後にクライアント(幼児を持つ母親)から「HELP ME!GIVE ME MONEY!」とお金を要求される。あぁ、現実に体験してしまった。同情心を隠しつつ、「I have no money.」と片言英語で答えた。
16:30 最終回の儀式
キャンプ初参加メンバーにPVHC(地元ボランティアコミュニティ)よりケニア衣装がプレゼントされる。宮城島先生談によると、イルファーからその物品資金は出ているらしいが、これも一つのコミュニケーション。キャンプメンバーに敬意を払ってくださったPVHCの気持ちがとても嬉しい。
20:00 マダーニの姉より夕食の招待「VILLEGE MARKET」へ
昨日の須藤先生の治療へのお返し、便乗してみんなでご馳走になる。肉だらけの夕食に、「食べるの大好き」清水先生すらダウン。そのうちダンシングフィーバー。その間ぷらり一人散歩に出かけ、山本先生(名古屋/内科医)に心配をかけてしまう…。そして写真を撮っていたら警備員さんに怒られ、その場で消去させられる。アラスカ組は今日で任務終了。私のつたない英語に気長におつきあいくださり、一緒に活動させてもらえたことに感謝。

9月22日(土)クリニック6日目(再度HIV陽性者フォローアップ日) 晴れ
07:15 出発
本日AMのみの診療とし、いつもより1時間早くクリニックを開始し、その後お買い物予定。
08:30 HIV陽性者フォロー日(先週の土日のフォローアップ参加者が少なかったため)
本来目的のフォロー予定者はなかなか来ず、周知不備により来場した一般診療希望者が多数ひしめく。
AMは薬局の棚卸。よく出る薬も見えてきた。初日と比べ、残わずか(途中の買い足しも数回 あり)、底をついた薬品も多数である。患者やボラから直接薬局に処方を求める人もちらほら。話には聞いていたが、ただ単に薬がほしいという欲求(ズルさ)を垣間見た。
鍼灸ブース激こみ。待ち人数も診療待ちと比べ物にならないほど人がたくさん。急遽ヘルプスタッフとして参加。鍼の在庫切れを持って終了。須藤先生、清水先生の手際のよさ、気配りに感動しながら手伝った。宮城島先生の診療にもちょこっとだけ入れてもらった。10代か20代前半の男性の両踝部近辺がただれている。10年近くそのまま放置していたらしい。生まれて初めて見た。あの状態で靴下・靴を履いて来ていた。宮城島先生が終わった後に「痛みはあるだろう。あの状態なら近々切断だろう」と教えてくれた。あそこまで放置せざるを得ない現実が目の前にあった。本日は直接患者との接触があった。生活の質の低さ(におい、皮膚服や靴の泥、不潔な衛生状態、長期にわたる関節変形、慢性疾患・・・)をしみじみ感じた。
今日も稲田先生・山本先生の計らいで2人の採血をさせてもらう。ラストは黒人の血管の細い女性だった。チャレンジしたものの失敗する(残念無念)。その女性には申し訳ないが、とても勉強になった。そして、やはり皮膚の泥ひどく、酒精綿で拭いても拭いても泥がつく・・・。話に聞いていた通りだ。
結局午前診療予定が15時過ぎにやっと終了。陽性者の来所が少なかったこと、時間が予定通り進まなかったこと。宮城島先生は「ストレスに感じた(不完全燃焼だ)」と言った。
15:30 マサイマーケットでお買い物
イルファー釧路師走講演会用のおみやげ中心に。移動式マーケットらしい。手作り民芸品が数々並んでいるが、こちらの人達の手先の器用ぶりには脱帽する。すぐ近くにはランドマークタワーのような高層ビルがある横でのマーケット。都会との貧富の差をここでも痛感する。宮城島先生、須藤先生の交渉上手に感動。すごいなぁ。マサイビーズ等商品選び楽しい♪個人的お土産ではちょっと交渉がんばってみた★「I'm child!」とズルイ手段も使ってみた(^_^)
20:30 夕食
最後の晩餐はアパートで自炊となった。おじや、味噌汁、ナポリタン、野菜炒め…。森下・須藤両シェフ中心にみんなでわいわい楽しかった。レイモンド(歯科医)からのシャンパン、エマ(小児科医)からのアイスクリーム。みんなの気持ちがあたたかい。最後の時間を楽しく過ごす一方で、稲田先生のキャンプに対する思い、コンドーム論、そして他スタッフのキャンプへの思い・・・。メンバーのあつい思いを聞き、再度気持ちが引き締まった。このキャンプに参加できたこと、ステキな人たちとの出会いに感謝の気持ちでいっぱい。同時に、本当に人に恵まれたなぁと思う。そして終盤は下ネタ時間に入り、稲田先生、内海先生、宮城島先生がとても輝いていた。生き生きしていた。
01:45、楽しい宴は終わる。

9月23日(日)〜24日(月)ケニアさよなら日 晴れ
08:15 学校へ行く
朝食後、スラム街の学校へ行く(寄贈式が行われる)。プムワニのスラム街を初めてじっくり歩いた。全体のQOLの低さ、治安の悪さ…。寄贈式では子ども達からお礼のダンスのプレゼントがあった。
ずっと薬局で通訳をしてくれたママ(現地人)と過ごした。すでに何人か孫のいるママは54歳。私のことを娘だと言ってくれた。業務中も「清香はすごくがんばっているよ!」といつも励ましてくれた。そして今日は「帰らないでほしい」とほろり涙を流してくれた。嬉しかった。嬉しすぎた。ママと「またこの地で会おうね」と約束し、お別れした。
15:00 ナイロビ空港へ
マイクロバスの上でスーツケースを固定するレイモンド、超かっちょいい!最後の最後にまた惚れ惚れする。空港到着後まもなく全身にじんましん出現。ランチの香辛料が原因?かゆいよぉ(*_*)稲田先生、トム(運転手)ともお別れ。稲田先生と再会誓う。そしてまた戻ってきたいとこの地を後にした。
17:15 ケニア発→ドバイ着
02:50 ドバイ発→中部国際空港(17:30)
名古屋組とも解散。12月のエイズ学会(広島)での再会を約束する。
17:45 セントレアホテルへチェックイン後、空港の温泉へ
夕食をとりながら、4人でキャンプの総括ミーティング(風)。宮城島先生からケニア女性の避妊のためのホルモン注射(コンドームを使わない男性との間の避妊法として多くの女性が選択するそう。それによるたくさんの弊害がある)の話、母子感染と母乳感染の話を聞く。そこには矛盾があった。保健師としての今後の大きな役割の一つを悟ったように思う。
21:00 釧路組もホテル内解散、明日10:00チェックアウト予定

9月25日(火)釧路へ
11:15 セントレア発→釧路着(13:00)
13:00 空港で釧路新聞の取材受ける
何となくボーっとして、取材に何を答えたのかも正直あまり覚えていない。

〜キャンプに参加して〜
このキャンプに初参加して、全てのことが新鮮で刺激的だった。プムワニと日本における生活の尺度のギャップがあまりにも大きすぎた。QOLってなんだろう?優先順位ってなんだろう?私が日本で培った価値観とはあまりにも違いすぎた。でも、そこには地元プムワニの生活があり、そのコミュニティにおける価値観があり、私の価値観を一方的に押し付けるものではない。それらを尊重する中で、でも必要だろうことは主張し改善していくことなのだろう(詳細検討は今後の私の課題である)。尊重しあうこと、思いをすり合わせること、そしてそこにはコミュニケーションが欠かせない。私の本業である保健師は「個々の生活に入り込む」仕事であり、ケニアで学んだこの教訓は本業においてそのまま通用する。
そして「公衆衛生」という広い視点においては、日本は恵まれていると同時に、あまりにも日本は整いすぎているのかな、とも思う。衛生環境、栄養状況、医療事情も充実しているのにもかかわらず、HIV感染をはじめとする性感染症は拡大している。精神的貧困・無恥・快楽の追求…。私達日本人はこの恵まれた環境が当たり前になりすぎて、少し甘えすぎなのかもしれない。予防手段・環境が身近にある中で、いかにこれを上手に使えるかは自分でしっかり考え、判断し、行動することだろう。一人ひとりが問題視すること、考える力を持つこと・・・。こんな当たり前そうなことが実は非常に欠けているように思う。子どもも大人も「精神的側面の強化・改善」することが今後の日本を変えていくのではないだろうか。これもケニアキャンプから学んだ大きな教訓である。地元釧路での予防啓発の柱を確認し、継続こそ大切なことだと思う。
そしてJICAやAMREF、日立製作所・・・。個々の団体の特色は横のつながりを持つこと、役割分担をすることでグンと活動の幅が広がるのだろうことも確認した。釧路における釧路市(行政)とイルファー釧路(NGO)が連携することの意味(もちろん他の団体も含めて)を再確認し、今後もより一層強化していきたいと思う。ここでも保健師の「コーディネート力」を最大限発揮していきたい。
今回「プムワニ」に対して何ができたか…。正直業務を遂行すること、現実を見て受けとめるだけで精一杯だった。しかし、このキャンプの継続がプムワニに浸透してきたこと、妊婦のHIV検査の義務化・ARTの無料投与、HIV陽性率の経年的減少等好転していることも実感した。その一方で母乳感染の未対策、避妊のためのホルモン注射による弊害や性感染症予防への意識の低さ、半年毎のプムワニキャンプが地元コミュニティ主体でどう継続していくか…等の課題も知った。時の流れとともに事情は変わり、そして課題も変わっていく。本業保健師の活動の中で培った母子支援対策、生活習慣・公衆衛生という大きな視野での健康づくり等、次回は保健師を生かした活動を通してプムワニ支援をしてみたい。そのために、語学の力も身につけたいと思う。
こんなに貴重な体験をたくさんさせてもらい、このチャンスを与えてもらったこと、全ての出会いに心から感謝の気持ちでいっぱいである。あまりにも個人的な収穫だらけで、メンバーやプムワニには還元できるものが少なすぎた。それがすごく残念。今度は「保健師」として胸を張ってのぞみたい。来年もぜひまた行きたい。それと同時にもっとたくさんのイルファーメンバーにもこの体験をしてほしいなぁと心から思う。この上ない充実した日々であった。